プリントワーク
◎薬品の種類
サイアノタイププリントには、まずはクエン酸鉄(III)アンモニウムとフェリシアン化カリウムという2種類の薬品を使用する。
クエン酸鉄(III)アンモニウムは特に毒性などもなく、インターネット通販などで容易に入手できる。
フェリシアン化カリウムの方は家電量販店の現像薬品コーナーにも置いてあり、こちらも簡単に入手可能だ。
市販のクエン酸アンモニウムは大きさが25グラム入と500グラム入の2種類あり、500グラム入の大瓶のほうが値段が大分お得になっている。
◎薬品の調合
まずクエン酸アンモニウム20グラムを取り出す。
薬品はキッチンスケールなどを利用して量を正確に計測する。
同様にフェリシアンカリウムも10グラムを取り出す。
クエン酸アンモニウム20グラム、フェリシアンカリウム10グラムを別々に蒸留水100ccに溶かし、よく攪拌して完成。
二つの薬液はそれぞれ別の遮光容器に入れて保存する。保存期限は一か月くらい。
保存容器は光が入らないものなら何でもよいが、大手家電量販店の現像コーナーに行けば上のような専用の
容器が200円~500位で売っている。
◎感光紙の製作
調合したクエン酸アンモニウム溶液とフェリシアンカリウム溶液を同量混ぜ合わせて感光液が出来上がる。
一度混ぜ合わせた薬品は保存が出来ないので、使い切る分だけを作る。
完成した感光液を刷毛を使い紙に塗布する。
感光液は刷毛を使い、ムラにならないように丁寧に紙に塗っていく。
刷毛は特にこだわりなどがなければ100均などで売っているものでも十分。
薬品は基本的に紫外線を含まない光には感光しないので電球下で作業が出来る。
塗布が終了したら紙を冷暗所で乾燥させて完成。
感光紙は吸水性のあるものなら基本的に何でもよい。
例えば布などにも焼き付けが出来る。
◎ネガの製作
インクジェットプリンターを使い、感光用のネガを製作する。
写真修正ソフトなどを使用して、プリントしたい画像をモノクロに変換し、さらにその画像を反転処理をして
モノクロネガ画像を作る。
ネガ画像を市販のインクジェット用の透明フィルムやOHP用のフィルムを使い、プリントする。
値段は少々高いが、ピクトリコというメーカーからピクトリコプロ・デジタルネガフィルムTPS100という
ネガ製作専用のフィルムも販売されている。
サイアノプリントは銀塩モノクロ写真と違い暗室ワークでトーンコントロールは出来ないので。ネガの
クオリティーが作品の良し悪しを決めてしまう。
なのでネガ製作がサイアノプリントでは最も重要な作業になる。
サイアノプリントの再現レンジは全体にかなり狭いが、特にハイライト側のレンジが極端に狭いのであまりにコントラストの強いネガを作ってしまうと安価なコピー機で印刷したような2階調のプリントになってしまう。
◎焼き付け
ブリントアウトしたネガシートと感光紙を重ねて上にガラス板を被せる。ネガが浮いてしまうとその部分だけ画像がボケてしまうので、さらに上に重しを乗せて感光紙とネガシートの間に隙間ができないようにする。
ネガシートを重ねた感光紙を太陽光または紫外線灯で露光させる。
露光時間は季節や時間、ネガ濃度、被せるガラス板の厚さなどにより大きく変わり、15分~紫外線灯を使用した場合などは条件によっては1時間以上必要な場合もある。
◎水洗、乾燥
露光が終了したら水道水で薬品を洗い流す。
その後水2リットルに塩素20~40㏄を入れてよく攪拌した溶液に先ほど水で洗い流した感光紙を10~30秒ほど浸し、再び水洗いをして、最後に感光紙をよく乾燥させて完成。
感光紙に厚手の水彩紙などを利用した場合は乾燥時に水張りという作業を行い、紙を平面化させる。
※水張とはプリントが濡れている状態で板やガラス板などにプリントの周囲を専用のテープで固定し、乾燥して紙が縮む力を利用して、紙を平面化させる手法。
乾燥が終了したら周囲のテープ部分をカッター等で切り取って完成
◎調色
完成プリントはお茶やコーヒーに含まれるタンニン酸を利用して色調を変える事ができる。
調色方法は煮出したお茶を冷ましてからバット等に入れて、完成プリントを漬け込む。
好みのトーンになったらプリントを取り出し、よく水洗いして完成。
お茶の種類によって赤みが強いものや黄色みが強く発色するものがある。
それらを上手に組み合わせて調色するとモノクロセピアのようなトーンを作る事も出来る。
色調が変わると作品の雰囲気もガラリと変わる。